因果関係を考える

よく、「叱る場合は一貫して叱らなければならない」と、しつけ本に書いてある。「同じ事をしても叱ったり、叱られなかったりするのは、犬を混乱させ、しつけにとってよくない」みたいなことが主旨である。でも、本当にそうだろうか?

先日、今年就職の大学4年生の長男がやってきて、それはちょうどミシェルのご飯の時間だった。サークルの中に居るため、もどかしがってキャンキャン騒ぎまくっていたミシェル。それを私が全く叱らないため、「うるさいんだけど、叱らないの?甘やかしすぎじゃないの?」と、言われてしまった。たしかに叱るときもある、「うるさい!」と感じた時や来客時など、「状況と私の気分」によって、叱ったり、叱らなかったりする。本来なら、一貫性が無いだめな接し方、ということになりますよね?

でも、それが「原因」でほんとうに犬がダメになってます?理屈ではなく、実際にどうなの?統計あるの?ミシェちゃんはスーパーいい子ちゃんですけど?(ウソ)

この仕事をはじめてから、「絶対こうだ」と思っていたことが、犬を育てていくうちに「あり?違うんじゃね?」と思う事が沢山出てきました。犬の幼稚園をはじめて4年目、小型愛玩犬を子犬から育てて2年目、新たに学んだことがたくさんあるし、今までの考えが覆ったことも数知れず、しつけ理論なんて、大概いーーかげんなものなんです。(お前が言うな、ってハナシ)

だいたいにして、「こういうふうにしつけましょう」と言われている、世に広まっている事で、実際に「証明」されていない」ことは沢山ありますから。そういうの見るたびに「実験して証明したんかい?」と思う私(お前が言うな・・・以下同文)。しつけ本の著者が「自分はそう信じてる」「常識的にそうだろう」という、「そう思っているから」というだけで、それが「真理」みたいに書かれている部分も、けっこうたくさんあると感じてます。

逆に、「続けていたらあきらかに改善が見られた」ということがあれば、論理的に説明がうまくできなかったとしても、「良い行動を引き出せた事実」として、広めていくべき「しつけ方の一つ」になります。そういった「根拠のあるしつけ方」を伝えていければいい、ドッグトレーナーもバージョンアップしていかないとね。

子犬に我慢をおしえる

今北野ドッグスクールの販売犬に、2匹のラブラドールレトリーバーの兄妹がいます。

ラブラドールレトリーバーは「歩く胃袋」という異名を持つくらい、食い意地が張っている犬種、と言われていますが、確かにそのとおり・・・餌の時間になると、すさまじく吠えまくり、飛んだり跳ねたり、ケージの中を所狭しと暴れまくります。

先日までいたミニチュアダックスフントも似たようなところがあって、育てるにあたって苦労したところですが、過去に3頭のラブラドールレトリーバーを育てた経験から言うと、個体差はあれども、餌の時間の興奮レベルの上がりっぷりはかなり激しいものがありました。ちなみに、シェパードの子犬、トイプードルの子犬、柴犬の子犬は、あまり大騒ぎしません。

ご飯の時間にそんなに興奮する、というのは食い意地がはっているだけでなく、単純に餌の量が足りないのかもしれません。基本的に、子犬は腹いっぱい食べさせて良いので、生後4カ月くらいまでは多少多目で与え続ける(便の様子を見ながら)ほうが、精神衛生的にはいいのだろうな。。。と思うのですが、大型犬の子犬は成長期にエネルギー過剰にすると関節のトラブルを招くことが明らかになっているため、「少し痩せ気味で育てる」のが、体のためにはいいようなのです。

いちおう、カロリー計算(月齢と現在の体重を元にして)して与えているのですが、毎回、毎回、狂ったように吠え続けるのでは困るため、「自制心を養うしつけ」を行っています。でも、これはあまり愉快なしつけではありません。できればあまり厳しくすることなく、待てる犬になってほしいものですが、ミニチュアダックスとラブラドールに関しては、こちらが相当強く待たせる意志を持たないと、飢えた野犬のように突撃してきて、飛びつき、ひったくり、お皿をひっくり返し、と、とても文明的とはいえない行動を見せるので、どの程度まで許容していいのか、判断に悩むところでもあります。

最近思うのは、「犬は集団になると吠えやすい」という点。少しでも他の犬より目立って早く餌にありつきたい、ご飯を一番にもらいたい、という「出遅れたくない心理」が働くのではないか?特に猟犬、テリア、といった攻撃性をそこそこ持った犬種や、レトリーバーやビーグルのような食欲旺盛の犬種に、そういった行動が目立つ気がします。

なぜ飼い主のいうことをきかない犬になるのか

「ちゃんとしつければ、絶対いい犬だと思うんです」

私がしつけや訓練を相談された時、よく飼い主さんが口にするセリフだ、同じ気持ちの飼い主さんは沢山いるだろう。

犬がドッグトレーナーのいうことはよく聞くのに、飼い主のいうことはまったく耳をかさないのはなぜだろう。かわいい甘えっ子なのはうれしいけど、爪を切らせなかったり、おいでと言っても来なかったり、行きたくない方へはがんとして動かなかったり、やめてと言っても吠えるのをやめなかったり、自分のしなくないことは甘え顔やかわいいしぐさで「やらないで済ませる」ことに犬はとても長けている。

これは、「しつけが悪い」「しつけをちゃんとしていない」という問題ではない、と私は思っている。犬をしつける、犬にいうことを聞かせるというのは、テクニックや技術の問題ではなく、犬に向き合うメンタルの問題だと思うからだ。飼い犬が言うことをきかないと感じてる飼い主さんの行動、メンタルを挙げてみよう

・犬にいうことを聞かせる努力を「面倒」「つらい」「嫌だ」と感じてしまう
・どうせ、がんばっても自分のいうことはきかないだろう、と思っている
・犬を無視したり、犬に厳しい態度をとることを想像すると、「犬に嫌われるのでは」と思ってしまう
・犬にやらせようとがんばるより、自分がやったほうが早いし、楽だと感じる
・犬が駄々をこねると、叱るよりなだめたり、諦めてしまう
・犬に厳しい態度をとることを想像すると、悲しい気持ちになってできない

これはすべて、「犬に従いたい」「犬の愛情をかちえたい」と潜在的に望んでいる人の行動心理で、この心理状態でいる限り、愛犬はあなたのいうことはきかないし、それどころか「より自分のいうことをきかせよう」と困った行動をより多く、より強く起こすことすらある。

そういう気持ちで犬と付き合っている人が、それを変えることはほとんど不可能に近い。犬の飼い方にきまりなどない。犬は一生自立することなくペットのままなのだから、一生犬の奴隷になって暮らしたとしても自由だと私は思っている。従属を喜びと感じる人に、「威厳のある飼い主になりなさい」などナンセンスではないか。

「このままじゃいけない」と、真剣に何かを変えたいと、飼い主自身が思わない限り、愛犬も変わることはないのだから。